講演会「双極性障害のいま」参加メモ(2012年1月7日、ノーチラス会主催)
メモ程度の拙いレポートなのはご容赦ください。聞き逃しや書き留められなかったことも多数あります。誤解や間違いがあればご指摘ください。
司会者・当事者はニックネームで名乗ることになっている、と司会のハニー?さん。
当事者(ノーチラス会会員)つりぼうさんの体験談
団体職員、総務でも専門性の高いところ、2回目の休職。
最初のきっかけだと思ったは、2003年の父の死と、それに続く娘の死。耳が聞こえなくなったり、吐いたりした。
2006年にパワハラ。体が動かなくなり、無断欠勤。車通勤で会社に着いてもドアが開かない。ここで、限りなく重度に近い中度のうつ病と言われる。
自殺企図、躁転。電車に飛び込み、それが会社に知れて出勤停止。「俺は不死身だ」と言い、家まで買うほど。
復職に向けて、通勤トレーニング、リワーク(認知行動療法、アサーショントレーニング、デイケア)。
今は
孤独ではない。「病気がさせたこと」ではなく、「それも自分」だと(社会は合わせてくれないのだから)
当事者(ノーチラス会会員)じゅんやさんの体験談
「普通」を追い求めてきた。
中3のとき、肩の怪我で野球ができなくなったのをきっかけにしてうつへ。不登校、高校中退し通信制高校へ(手続きも自分ではできず親がした)。
大学進学するも、愛犬を失い、自らうつ転を恐れていたら怒りがわき、そこから躁転。思考が止まらなくなり、メジャーリーガーになると言い出す。
その後うつ転し自殺企図。復学が怖くて通信制大学へ。学歴コンプレックス。
今は
仲間をみて前向きに。早起きしても一日調子が悪いので、それなら寝坊して有意義な一日にしよう。社会よりも、内なる声を聞こう。将来への不安はある。
「日本うつ病学会・双極性障害委員会の活動」尾崎紀夫さん(名古屋大学大学院医学系研究科精神医学・親と子どもの診療学分野)
英語名は Japanese Society of Mood Disorders であるように、うつ病に限らず気分障害全体を対象としている。
3学会共同宣言。啓発(職域での、学校での)、心理士養成の必要性。
その他
リチウム血中濃度は1日のうち最低を測る。朝はリチウムを飲まずに採血すべし。これが徹底されていない。# 筆者も経験がある
産後うつ。54%が双極性とも。愛着の低下につながる。6カ月後の再入院が22%。妊娠中に(奇形を恐れて)気分安定薬をやめるためか。
双極性障害の人が言われて困ることば。(躁の時)調子よく見えるなど、いろいろ(多数)。
病識とは、自覚と症状と治療。
双極性障害の心理教育マニュアルを翻訳中。
アドヒアランス(患者が積極的に服薬などの治療法を守ること)悪化の要因。薬の副作用など、いろいろ(多数)。
季節性うつ病には、日の出日の入りの時刻が関係しているようだが、対人関係のリズムも重要。 # → 社会リズム療法
脳と心の関係は一対一ではなく、対人関係のなかで、脳は他の人の心とも関係しあい、心と心とも影響しあう
「双極性障害の原因解明〜最近の進歩」加藤忠史さん(理化学研究所脳科学総合研究センター)
目指すのは(他の病気のように)検査で分かること。脳の病変を見つける。即効薬、根本的な治療、細胞療法。
光トポグラフィー(NIRS)は…… 2011年1月のNature誌で批判された。深呼吸やPTSDでも見られる。浅い箇所を測っても同じなので前頭葉ではない?
ケタミンに即効性があるという報告が出たが、追試では否定された。
前部帯状回が小さくなる。追試でも確認された。リチウムで大きくなる。感情の抑制する部位。しかし、うつ病やPTSD、統合失調症でも見られる。
外からみるのでは限界があり、直接細胞をみる必要がありそう。
「双極性障害の新しい治療薬」 鈴木英二さん(国際医療福祉大学熱海病院)
「双極性障害の対人関係・社会リズム療法」 水島広子さん(水島広子こころの健康クリニック・慶應義塾大学医学部精神神経科)
エビデンスがある(家族療法にも)。Ⅰ型の再発、Ⅰ型とⅡ型のうつ、Ⅰ型とⅡ型のうつ後改善。
Ⅱ型に対する単独での適用も一部にある。
社会リズム療法
生活リズムではなく「社会」リズム。人からの刺激。それがストレスでなくても。
最低でも、起床・人との最初の接触、仕事など開始、夕食、就寝、それそれの時刻と対人刺激を記録。目標時刻に近いかどうかではなく、変化に注目する。
質疑応答
ラミクタールで皮疹がでたら、再度の投薬はやめた方がいい。アレルギーは2度目が強くなる。
リチウムによる甲状腺障害には、リチウムを減らすのではなく、甲状腺ホルモン剤で。
ラミクタールの躁状態への効果は 3rd choice 程度にはある。
スペクトラムの考え方は、臨床ではまだ採用されていない。
季節性うつは双極性の可能性が高い。
悲哀の必要性。病気を認めないとそれとうまく付き合えない。
薬を止めるか否かは、病気の状態が選択する。
広汎性発達障害、統合失調症、認知症との間を往き来する場合がある。これは何を意味しているのか。
役割の決まっている場だと安心しやすい。自分のことばかり(自分が悪いなど)でなく、相手のことを考えてみる。
研究予算はガンと2ケタも違う。
DSMでも、社会的機能が失われて初めて障害と定義される。
# 筆者の感想。やはり生で見聞きするのは違う。仲間ができると好転する。研究の道は険しい。当事者が行える対人関係療法の翻案があるとうれしい。