こんぼ亭 第7回月例会 また働きたい―リワークの秘訣
2012年2月4日(土)13:30〜 赤羽会館
メモ程度の拙いレポートなのはご容赦ください。聞き逃しや書き留められなかったことも多数あります。誤解や間違いがあればご指摘ください。
「リワーク プログラムについて」 秋山剛さん(NTT東関東病院精神神経科。日本で初めて医療機関にリワーク プログラムを立ち上げた、リワーク/復職支援のパイオニア。うつ病リワーク研究会世話人)
経緯
- 企業の嘱託医の経験
- 精神医学的面接の駆使(企業なので、5分でなく30分かけられる)
- 防げない再発
- 診察室の指導では不十分
- 1996年に関東病院へ
- 開いていた作業療法室を利用
- 病院に通ってもらったら?と考えた
- 電電公社からNTTへ(民間企業になり余裕がなくなる)
- 長谷川病院の大塚作業療法士をリクルート
- 1997年開始
- 「復職不可」へのフォロー(たとえできなくても、せいいっぱい努力したいう満足感があればその後の人生にプラスになる)
まず一般論から
背景 全人的なプロセス
働き蜂のアイデンティティ
↓
病人のアイデンティティ
↓
働き蜂へ→再発
複雑な心情
- 発病への恨み(会社へ、上司へ)
- 生活の糧を失えない
- 生きがいの回復
- 孤独感→疾病否認(「同僚もいっしょにリワークしてる人に会ったことがない」)
- 早く元に戻りたいという焦り
健康管理と治療
- 半々
- 健康管理は集団で
- 治療は個々に(個人差があるため)
- リワーク後の健康管理をふまえた治療
- 治療過程をふまえた健康管理
診察室の限界(5分診察)
- 主観的な苦痛は報告されるが……
- 行動の特徴は分からない
- 生活状況も分からない
- したがって、(診察室での)復職可能性の診断は困難
活動記録表
- 時間単位に、活動・状態を記録(あるいはさらに、睡眠の質やどう動いたかを色分け)
- よくあるのが、活動記録表をつけない、内容がパラパラ
- 復職への努力意欲の確認ができる
- 活動性のバラツキが大きいこともよくある(最悪の日でも仕事ができるようにする)
職場復帰のための指導
- 睡眠・覚醒のリズムが安定
- からだ慣らし:午前中の運動など
- あたま慣らし:図書館などでの勉強(自分の部屋から出る)
- 上司・産業医への挨拶 接触(顔色を見るだけ上司の不安が減り、さらに、課題をもらって週に一度報告するなどして仕事ができることを確認)
- 試し出勤・リハビリ出社
ここから具体的な内容
リワークプログラム
- 体調の認識→作業との折り合い(過剰適応しない)
- スタッフの指示・指導
- 参加者同士の助け合い
- 仲間との「こころがけ」作り
具体的な目的
- 生活リズムを整える
- 作業能力を改善する
- 対人関係能力を改善する(上手に断る、安易に引き受けない)
- 疾病理解→体調コントロール
プログラムの枠組み
- クリニック: デイ ケア
- 病院: 作業療法(NTTの場合)
- 主治医:同一施設/他施設
- 復職先との連携・課題(実際にはそこまでの余裕が無い、予算的にも)
スタッフ
- 新しいプログラム
- 柔軟性・協調性
- 高機能レベルの患者(スタッフより高給取りであったり)への対応
- 心理的援助のスキル
- 主治医に頼らない
プログラムの構成
- 単独作業プログラム(PCなど)
- 共同作業プログラム(プレゼンなど)
- 心理社会教育
- 集団認知行動療法
リワークプログラムの標準化評価項目
- 基礎項目
- 対人交流
- 心理的側面
評価項目A:基本項目
- 出席率
- 眠気・疲労
- 集中の持続
評価項目B:対人交流
- 他者との会話
- 協調性
- 適切な自己表現
- 不快な行動(を無くす)
- 役割行動
- 対処行動(新しい仕事に対してなど)
評価項目C:心理的側面
- 気持ちの安定
- 積極性・意欲
- 注意や指摘への反応(受け止め)
出席率
<4> 95%以上
<3> 90%〜95%(平均レベル)
<2> 80%〜90%
<1> 80%未満(これが1つでもあったら駄目)
眠気・疲労
プログラム参加への影響についてを評価 <4> まったく観察されない <3> 観察されるが、影響はみられない(平均レベル) <2> 影響が週1回未満みられる <1> 影響が週1回以上みられる
主な課題
- 家族関係への援助
- スタッフの研修
- スタッフのサポート
- ネットワーク構築
- コンサルティング機能
「生きにくさを生きやすくする〜うつ病からの復職支援」 伊藤崇さん、株式会社リヴァ代表取締役
復職が難しい理由
- 再発のしやすさ
- 再発6割
- 再々発7割
- 3度目の再発9割
- 本人と周りの疾病理解とその対策が不十分
リヴァ卒業生、現スタッフ(双極性2型障害)
- 22才でうつ、28才で双極性障害と診断
- ムード カーブス(6ヶ月周期)
- 準備ができる、抑える
- 受容
- 軽躁で良かったこと悪かったこと・対処
- うつで良かったこと悪かったこと・対処
- スタッフ(支援員)として
- 自分をモデルとして
- 「治す」から「寄り添う」へ
質疑応答
- 海外ではなぜ無かったのか?
- アメリカは転職が当たり前でそもそも復職自体がない。ヨーロッパは手厚い福祉で生活した方が楽。日本は中間型のため復職支援が発達。
- 躁とうつをどうコントロールしているか?
- 高機能の気分障害に対して(スタッフとして)
- よく勉強する、丁寧に話す、きちんと説明する、自主性と責任。
- 若いうちは難しい。分からないことに対して誠実に。
- なぜそうするのか説明する。
- 統合失調症の支援
- 本人の意志。病を抱えながら対処を学ぶ(集団で)。
- 各職種の役割
- 大きな違いはない。目標はまわりとトラブルを起こさず仕事ができること。
- 企業体験・双極性障害の体験が役に立っている。
- 立ち上げ方、横浜には?
- NPOや福祉制度の利用。4月からリヴァが横浜にも。
- 関東なら成り立つ。
講演会「双極性障害のいま」参加メモ(2012年1月7日、ノーチラス会主催)
メモ程度の拙いレポートなのはご容赦ください。聞き逃しや書き留められなかったことも多数あります。誤解や間違いがあればご指摘ください。
司会者・当事者はニックネームで名乗ることになっている、と司会のハニー?さん。
当事者(ノーチラス会会員)つりぼうさんの体験談
団体職員、総務でも専門性の高いところ、2回目の休職。
最初のきっかけだと思ったは、2003年の父の死と、それに続く娘の死。耳が聞こえなくなったり、吐いたりした。
2006年にパワハラ。体が動かなくなり、無断欠勤。車通勤で会社に着いてもドアが開かない。ここで、限りなく重度に近い中度のうつ病と言われる。
自殺企図、躁転。電車に飛び込み、それが会社に知れて出勤停止。「俺は不死身だ」と言い、家まで買うほど。
復職に向けて、通勤トレーニング、リワーク(認知行動療法、アサーショントレーニング、デイケア)。
今は
孤独ではない。「病気がさせたこと」ではなく、「それも自分」だと(社会は合わせてくれないのだから)
当事者(ノーチラス会会員)じゅんやさんの体験談
「普通」を追い求めてきた。
中3のとき、肩の怪我で野球ができなくなったのをきっかけにしてうつへ。不登校、高校中退し通信制高校へ(手続きも自分ではできず親がした)。
大学進学するも、愛犬を失い、自らうつ転を恐れていたら怒りがわき、そこから躁転。思考が止まらなくなり、メジャーリーガーになると言い出す。
その後うつ転し自殺企図。復学が怖くて通信制大学へ。学歴コンプレックス。
今は
仲間をみて前向きに。早起きしても一日調子が悪いので、それなら寝坊して有意義な一日にしよう。社会よりも、内なる声を聞こう。将来への不安はある。
「日本うつ病学会・双極性障害委員会の活動」尾崎紀夫さん(名古屋大学大学院医学系研究科精神医学・親と子どもの診療学分野)
英語名は Japanese Society of Mood Disorders であるように、うつ病に限らず気分障害全体を対象としている。
3学会共同宣言。啓発(職域での、学校での)、心理士養成の必要性。
その他
リチウム血中濃度は1日のうち最低を測る。朝はリチウムを飲まずに採血すべし。これが徹底されていない。# 筆者も経験がある
産後うつ。54%が双極性とも。愛着の低下につながる。6カ月後の再入院が22%。妊娠中に(奇形を恐れて)気分安定薬をやめるためか。
双極性障害の人が言われて困ることば。(躁の時)調子よく見えるなど、いろいろ(多数)。
病識とは、自覚と症状と治療。
双極性障害の心理教育マニュアルを翻訳中。
アドヒアランス(患者が積極的に服薬などの治療法を守ること)悪化の要因。薬の副作用など、いろいろ(多数)。
季節性うつ病には、日の出日の入りの時刻が関係しているようだが、対人関係のリズムも重要。 # → 社会リズム療法
脳と心の関係は一対一ではなく、対人関係のなかで、脳は他の人の心とも関係しあい、心と心とも影響しあう
「双極性障害の原因解明〜最近の進歩」加藤忠史さん(理化学研究所脳科学総合研究センター)
目指すのは(他の病気のように)検査で分かること。脳の病変を見つける。即効薬、根本的な治療、細胞療法。
光トポグラフィー(NIRS)は…… 2011年1月のNature誌で批判された。深呼吸やPTSDでも見られる。浅い箇所を測っても同じなので前頭葉ではない?
ケタミンに即効性があるという報告が出たが、追試では否定された。
前部帯状回が小さくなる。追試でも確認された。リチウムで大きくなる。感情の抑制する部位。しかし、うつ病やPTSD、統合失調症でも見られる。
外からみるのでは限界があり、直接細胞をみる必要がありそう。
「双極性障害の新しい治療薬」 鈴木英二さん(国際医療福祉大学熱海病院)
「双極性障害の対人関係・社会リズム療法」 水島広子さん(水島広子こころの健康クリニック・慶應義塾大学医学部精神神経科)
エビデンスがある(家族療法にも)。Ⅰ型の再発、Ⅰ型とⅡ型のうつ、Ⅰ型とⅡ型のうつ後改善。
Ⅱ型に対する単独での適用も一部にある。
社会リズム療法
生活リズムではなく「社会」リズム。人からの刺激。それがストレスでなくても。
最低でも、起床・人との最初の接触、仕事など開始、夕食、就寝、それそれの時刻と対人刺激を記録。目標時刻に近いかどうかではなく、変化に注目する。
質疑応答
ラミクタールで皮疹がでたら、再度の投薬はやめた方がいい。アレルギーは2度目が強くなる。
リチウムによる甲状腺障害には、リチウムを減らすのではなく、甲状腺ホルモン剤で。
ラミクタールの躁状態への効果は 3rd choice 程度にはある。
スペクトラムの考え方は、臨床ではまだ採用されていない。
季節性うつは双極性の可能性が高い。
悲哀の必要性。病気を認めないとそれとうまく付き合えない。
薬を止めるか否かは、病気の状態が選択する。
広汎性発達障害、統合失調症、認知症との間を往き来する場合がある。これは何を意味しているのか。
役割の決まっている場だと安心しやすい。自分のことばかり(自分が悪いなど)でなく、相手のことを考えてみる。
研究予算はガンと2ケタも違う。
DSMでも、社会的機能が失われて初めて障害と定義される。
# 筆者の感想。やはり生で見聞きするのは違う。仲間ができると好転する。研究の道は険しい。当事者が行える対人関係療法の翻案があるとうれしい。
愛着障害の克服(メモ)
- 良いベースキャンプの確保(安全感、感受性・共感性、応答性・主体性の尊重、安定性・一貫性)
- 愛着の傷の修復(癒し、取り戻し・幼児化・遊び・甘え・反抗、語り、怒り、赦し)
- 役割と責任をもつ(否定的認知からの脱却・清濁併せ呑む・ユーモア、自分が自分の「親」になる、人を育てる)
- 作者: 岡田尊司
- 出版社/メーカー: 光文社
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今年の漢字1文字は……
「復」でいいよね